一年の計は元旦にありっといいますね。
新しく迎える一年の目標や計画は、
その年の初めの元旦に立てるべきである。
それなら、
今年の目標や計画は達成できたのか?
年の瀬に振り返ってみようじゃないのっと、
棟梁とお良と八の会話です。
お題は、
活計歓楽(かっけいかんらく)と
喜怒哀楽(きどあいらく)です。
お良:
活計歓楽の言葉の意味を知っていますか!
金銭的に恵まれて、
毎日贅沢な生活を楽しんでいるという使い方もあるらしいが、
精神的に前向きで、
明るく人生を楽しんでいることにも使われるらしい。
ま、お金が先か、心のありようが先か、
どっちが先でも両方揃えば喜んでいられるってことだねー。
棟梁:
ってことは、どっちかが欠けても喜べないってことだな!
お良:
そうだよ!
金がなけりゃ、米の心配をするね。
金がなけりゃ、家賃(たなちん)の心配もするね。
そうなったら前向きな考えなんて出てこない!
出るのはため息ばかりで覇気も消え伏せるってね。
物事に積極的に取り組もうって意気込みなんぞ、
忘れちまってますね。
棟梁:
そうかい!
ならよう、
精神的に前向きで、明るく人生を楽しんでいるっと思えたら、
金抜きで考えられるんじゃないのか?
お良:
そこまで言うなら、
おまえさんの考えを聞いてみようじゃないか!
棟梁:
お良の考えを聞きたいんだけどな。
ま、いいや、俺が思うには!
活計歓楽について話せるのも、雨風しのげる家があって、
人並みの暮らしができているから、話せることなんだよな!
こうやって話せるってことが、お良の言う、
金銭的に恵まれて、毎日贅沢な暮らしとは言わないが、
精神的に前向きで、明るく人生を楽しんでいるってことだよな!
お良と俺が今話していられるのも夫婦(めおと)だから
活計歓楽について話せるんだよな!
人様に話すってことになったら、
そんな余裕なんか無いよ!
偉そうに言うんじゃないよ!
うちの事情も知らないくせに! ってな!
小言の一つや二つ、聞くことになるねー。
お良:
ってことは?!
活計歓楽について話せるってことは、
毎日贅沢な暮らしとは言わないが、
雨風しのげる家があって、
人並みの暮らしができているから話せるってことなんだね!
おまえさん、一つ聞いてもいいかい!
毎日贅沢な暮らしとは言わないがってとこが、気になりますねー。
贅沢な暮らしってのは、どんな暮らしなんだい?
聞かせておくれよ。
棟梁:
棟梁の心中は、
気になることは、そこかい?
今が幸せってことに、気づいて欲しいんだけどな。
まさか、「贅沢な暮らしってのは、どんな暮らしか?」
ってことにひっかかるとは・・・
お良:
おまえさんの言う通り、夫婦(めおと)だから言いますがね!
きれいごとを並べて立てて話せるのも
夫婦(めおと)だから話せるってことだよね!
おまえさんの言いたいことは、分かりますよ。
芝居見物に着物をあつらえるのも贅沢なことだと思っていますよ。
おまえさんが精を出して仕事に気張っているから、
家を守る私からすれば、安堵な気持ちで暮らせるってことだよね。
気掛かりなく安心していられるのも、おまえさんのおかげです。
今年もいろんなことがあったけど、
年の瀬に振り返ってみることができるのも
人並みの暮らしが、今もあるってことなんだよね!
今年の目標や計画は達成できたのか?
毎年、願っていることが、
人並みの暮らしができて、明るく楽しんでいきたい!
願いが叶っているってことだから、
今年も達成できたってことだね!
棟梁:
分かっているじゃーねーか!
そろそろ八が来るっと思うんだが、まだかい?
お良:
来ましたよ。
八:
おかみさん、
お呼ばれにあずかり恐悦至極でございます。
お良:
驚いた!
どこで覚えたんだい?
八:
ちゃかさないでくださいよ。
あっしだって言葉の使い方は分かっているつもりですよ。
棟梁とおかみさんを見習っていますからね!
お良:
上手いこと言うじゃないか!
八:
お呼ばれなんで、上がらせてもらいます。
ところで、棟梁!
今年も良い年でしたか?
お良:
棟梁が聞くことだと思うんだけどね、
先に八から聞くとはねー。
棟梁:
ま、いいやな。
今年も良い年だってことを、今お良と話していたとこだ。
八が先に今年も良い年でしかたかって聞くってことは、
八にとっても、良い年だったってことなんだな!
八:
そうは、言ってません。
棟梁:
拍子抜けするってーのは、こういうことだな!
八の今年一年はどうだったんだい?
八:
へ、今年は喜怒哀楽の怒哀でした。
怒られて、怒られたことを振り返って哀しんでました。
一年を振り返えれば、そんなことばかり思い出してました。
棟梁:
そのわりには、落ち込んでいるようには見えねーな?
八:
そりゃーそうですよ!
怒った本人の前で落ち込むことは、しません!
棟梁:
?
原因は俺かい?
八:
そりゃーそうでしょー!
棟梁のおかげで、いっぱしの大工職人になりつつある、俺。
そこは、控えめに言います。
それも棟梁が喝を入れてくれたから、
叱り励ましてくれたからこそ、今年は喜怒哀楽の怒哀でした。
あっしが思うのは、
心を鬼にして渇を入れた棟梁は精神的に疲れると思うんです。
疲れた棟梁を見ていると、なんだかあわれに思いまして、
いやいや、あっしをあわれんで言っていたのか?
今年のあっしはどうでしたか?
棟梁:
俺に感謝しているのか?
俺に物言いをしているのか?
何を言いたいんだか?
八:
強いて言うなら、感謝ですね!
お良:
(笑みを浮かべながら)
おまえさん、
八が棟梁のおまえさんに言いたいことは、
棟梁が叱り励ましてくれたからこそ、
今の八が大工職人としてやっていける!
棟梁の下で修業しているからこそ、人並みの暮らしができる。
もっと言うなら、
喜怒哀楽の怒哀(悲)が分かるからこそ、
褒められた時に天にも昇る心地 良さ、
これ以上ないほどに喜ばしい気持ちになるってことですよ!
八:
そう!
おかみさんの言う通り!
棟梁、感謝してます。
お良:
さて、八の気持ちが分かったことろで、
旨い物を食べて、旨い酒でも呑んだら嬉し楽しい気分になったら、
「喜怒哀楽」の一年が良いことだって気づけましたね!
来年もよろしくお願いいたします。
今日の笑楽(わらら)噺はこれまで
またのお越しおー