wararabanasi’s diary

笑楽と書いて(わらら)と読みます。日常の出来事をこ噺にしました。

会者定離(えしゃじょうり)

出会った人とは、

 いずれ必ず別れることになるという意味だそうです。

仏教用語でこの世のはかなさを表した言葉になります。

会者とは、この世で出会う人たちのことを表し、

定離は必ず離れるという意味だそうです。



無言で帰ってきた父の顔を見たら寝息をたてているんじゃないか?

口元を触れてみたら冷たさが伝わってきた。

それでも突然の他界を受け入れられない。

父の体がこの世から消えるなんて、

どんなに望んでも、

もうこの世で二度と会うことはできません。






親元から離れて第二の人生をこの人と生きていきたい!

この人となら、どんなことでも乗り越えられる。

周りから、

同居だ、長男だっと言われようとも気にならない!

嫁ぐまでは。

縁あって夫の両親との同居が始まります。

 

夫婦になるということは、

互いの親、兄弟に親類との付き合いが始まることになります。

嫁いだ先の環境に戸惑いながら、慣れ親しもうと努力をします。

環境の違いに戸惑いながら同居生活が1年、2年と月日は流れ、

何年目からでしょうか?

嫁いだ先を我が家と言えるようになってからは、

姑(舅)と何でも話せるようになった?!

 

人間関係の悩みの中でも

嫁姑(舅)の関係は切ることができない大きな問題だと思います。

 

・嫁姑(舅)の縁を切りたければ離縁するしかない!

 

・離縁したくなければ嫁姑(舅)との関係を続けていくしかない!

 

二択になれば、今度は夫婦の問題になります。

 

夫婦喧嘩をしながらも何十年も連れ添うってことは、

嫁姑(舅)との関係も何十年も続けていることになります。

何十年も続けていると、互いに情が移ります。





お時間がございましたら、

読み進めてください。




今回の小噺は、

会者定離(えしゃじょうり)

 

出会いがあれば、必ず別れがきます。



小噺

 

亭主:

「見ざる聞かざる言わざる」の三猿を

きめ込んでいるって言われた時は、私は驚いたねー。



女房:

あー、三猿ねー。

 

私は嫁なんですよ、

この家で私をかばうことができるのはあなただけなんですよ!

たまにはお母さんに言い返してくださいな。

あなたが黙っていたらあなたが納得していると思うじゃないの!

 

今だから言いますがね。

日光東照宮

「見ざる聞かざる言わざる」の三猿をきめ込んでいるよね。

 

「見ざる聞かざる言わざる」の意味を知って、

あなたは三猿をきめ込んでいるんですか?

 

母猿が手をかざして子猿の将来をみています。

幼いころ小猿たちは、

「悪いものは見ない聞かない言わない」と母猿から教えられます。

 

お母さんが小言を言ったら、

お母さんの目の前で、

私の両耳をあなたの両手でふさいでくださいな!

私が言った側から、お母さん自身が耳をふさいでいましたね。

 

私は驚きましたよ!

 

お母さんが側にいるなら、私の口をふさいでほしかった!

 

亭主:

そんなことも、あった、あった!

 

女房:

お母さんが小言を言った後に、

なぐさめてくれたのがお父さんでしたねー。

 

「細かいことをいちいち取り立てて言うことを

 まともに聞くんじゃないですよ。

 あの人(姑)を支えるために嫁いできたんじゃないからね」

 

私は、お父さんの言葉に支えられました。

 

亭主:

そうだった!

あなたが同居を承諾したこともあって、

あなたのことを一目で気に入ったのは父の方でしたからね。

 

女房:

そうでした!

 

同居の意味を分かってなかったー。

後悔した時もありました。

でもね、

今だから言いますよ、

あなたの支えよりもお父さんの支えがあったから、

離縁しないで、ここまでこれたと思います。

 

亭主:

なんだか嫌みに聞こえますねー。

 

女房:

私の本音が嫌みに聞こえたとしても、

30年も連れ添ってきたんです。

お父さんは喜んでくれていると思います。

お父さんの体が消えてしまった今後からは、

天高く舞い上がったお父さんが喜ぶことはなんなのか?

あなたは考えていますか?

 

亭主:

そりゃー、母さんと仲良くしてもらうことが

父さんの喜ぶことだと思います。

 

女房:

あなたは勘違いしていませんか?

お父さんが喜ぶことは、とっくにしていますよ!

30年も寝食ともにしているんです。

お母さんと喧嘩もしてきましたが、

喧嘩してきたからこそ、情も移ります。

情が移れば、親友と同じじゃないかって思えるようになりました。

 

姑と思うから腹が立つよね!

親友のひとりだと思えば、言いたいことも言える。

悪さするわけじゃないけど、

たまには悪友だと思うこともあります。

それも腐れ縁だと思えば、いいんだーー!

 

亭主:

腐れ縁!

言い切りましたねー。

 

腐れ縁の語源は「鎖縁」(くさりえん)と言われてまして、

「鎖縁」は

「切ることが難しい鎖のように強い縁で繋がれている関係」

この「鎖縁」の漢字が同じ「腐り」に変わり腐れ縁となりました。

 

腐れ縁の意味には、相手を認めている。

信頼している意味を込めて使うこともあるんだねよ。

 

女房:

そうそう、私はそれを言いたいんですよ!

 

特に望んでいた訳では無いが長年同じ時間を過ごし、

理解し合っている友人関係、いやいや嫁姑(舅)の関係。

 

私が嫁いでくる前は、

この家を支えてきた人は、お父さんとお母さんなんだよね。

あなたという物体を

作り出したのもお父さんとお母さんなんだよねー。

 

あなたという物体と夫婦になれたのも、

お父さんとお母さんのおかげなんだよねー。

 

最初にあなたが私を見初めたからこそ、

今、この家に私は居るんだよねー。

 

亭主:

褒めてんのか、けなされているのか分からないけど、

30年も続いているってことは、

両親にしても私達夫婦しても

忍耐強く月日を重ねてきたってことですね。



嫁いだ先の環境に戸惑いながら、慣れ親しもうと努力をしてきた。

両親にしても私達夫婦しても、

自分の周りで嫌なことが起こったとき、

それを嫌なものとして、

しぶしぶ受け入れて我慢してきたこともあるでしょ!

 

そんな状況でも自分の心を前向きな状態に保つ努力をすることで、

忍耐強く関わってきました。私は。

 

あ、私もです。

 

女房:

ま、そういうことにしておきましょうか!

 

亭主:

さて、

夜も更けてきました。

母さん、そろそろ蝋燭(ろうそく)の火を消しますよ。

 

女房:

「四十九日忌」の法要を終えて安堵したんですねー、

お母さん、ここで寝ては体が冷えますよ。

さー、お布団に入ってくださいな。





今日の笑楽(わらら)噺はこれまで

またのお越しおー