文字や言葉は使わなくても
お互いの心と心が通じ合う
それが「以心伝心」です。
あたしも試してみました。
文字や言葉を使わないなら
ジェスチャーだぁ~!!
亭主の目の前に立ちまして、
身振り手振りでやってみました。
手を合わせて腰をかがめて
お尻を突き出しました。
亭主:
トイレに行きたいのかい?
伝わりませんでした。
中国芸術団で観た
千手観音の優美な踊りだったのにぃ~残念。
「以心伝心」
まだまだ修業が足りない。
こ噺
棟梁:
なにやってんだい?
女将さん:
想像してごらんよ
棟梁:
けつまずいて物にあたり散らかす、おまえ
目がまわってぇ~ふらつく、おまえ
目がまわってぇ~しゃがみこむ、おまえ
扇子でハエをはらってる、おまえ
足を引きずってぇ~、引きずってぇ~
もう~我慢できねぇ~って、
着いた所が、かわや!
女将さん:
なにとっちらかったこと
言ってんだよ
美しき女房の舞いが
見て分かんねぇ~のかい!
棟梁:
酒の席なら、分かったかもなぁ!
女将さん:
あ、そうだぁ!
とっちらかってるって言えばさ!
最近越してきた、
お夕さんなんだけどさぁ!
独り身のはずなんだが?
夜中に数名の声が飛び交っているってぇ
噂されててねぇ、
周りも心配してんだよねぇ~
越したばかりの人だから、
なんかぁ~、えたいが知れないって
言ってねえ、
長い付き合いになると思うから、
一度、あたしが聞いてみようかねって
思ってんだけどねぇ。
聞いた方がいいかねぇ、おまえさん。
棟梁:
そう~だなぁ、
えたいが知れないなら、
お良一人行かせるのは心配だぁ、
だからと言って、
男のおれが
ついてくのもよくねぇ~しなぁ~
あ、もう一人とっちらかってるのが
いるだろぉ!
そうそう、お両だよぉ、
もしかしたら、話が合うやもしれねぇ~よ!
女将さん:
そうだねぇ、
お両だねぇ!
この前も、お稲荷さんに
お稲荷をお供えしてたから、
えらいねぇ~!って
褒めてやったんだよぉ、
朝晩、手ぇ~合わせてるんだよぉ!
手ぇ~合わせるのはえらいんだけどねぇ!
よくよく見てたら、びっくり仰天!
お稲荷をお供えして、
お供えしたお稲荷を持ち帰って、
その繰り返しなんだよぉ?
ほんの数秒しか、お供えしてないんだよねぇ
そしたらお稲荷さんは食べてる途中で
持ってかれるだろぉ!
お稲荷を置いといて、
ゆっくり食べてもらわなきゃ~ねぇ、
おかしなことをする、お両だから
上手く相手の事情が聞けるかもしれないねぇ
棟梁:
どう~だったぁ?
女将さん:
おまえさんの言う通りだったよぉ、
お両を連れてってよかったよぉ
なぜかしらないがねぇ?
二人で身振り手振りで
笑ったり、首を傾げたりしてねぇ~
見てるこっちが笑っちゃたねぇ~
お夕さんは芸事で身を立てたいらしくて
夜中に飛び交ってたぁ~声は
一人何役って、声色使ってたんだってぇ、
昼日中は集中できないから、
静かな時(時間)に芸を磨いてるそうだよぉ、
それでねぇ、自分の芸を
喋ったら芸の流れが分かるだろぉ、
それを身振り手振りだけで伝わったら
自分の芸に自信が持てるってぇ、
お夕さんが言ってたんだってぇ。
芸の道ってたいへんなんだねぇ。
お夕さんの身振り手振りで
分かったのが、お両なんだよぉ~
意気投合ってやつだねぇ
心配も消えたことだし、
長屋のみんなに伝えてくるよぉ
棟梁:
すげぇ~もんだなぁ~
初めてあった人でも
「以心伝心」
伝わるんだなぁ~
すげぇ!
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気心しれた仲ですと
表情や仕草で分かるのが、
「以心伝心」だそうです。
そうしますと
永年連れ添った夫婦なら
分かるのかな?
あたしが黙ってますと
亭主が声をかけまして、
それでも黙ってましたら
言葉にしねぇ~と
分かんねぇ~だろ
もっともです。
こんなこともありました。
夫婦でぇ~、
目的を決めずに外出しまして、
あたしの頭に浮かんだ場所と
亭主が浮かべだ場所が一致しました。
これが『以心伝心』ですね。(笑)
今日の笑楽(わらら)こ噺でした。
ここでお開き
またのお越しお~。